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契約的束縛・誘惑なる秘密
第27章 香港―苦痛とメモリー
「女! どうやって……!?」
診療椅子擬きに固定されていたサザンクロス。あれを自力で脱するのは無理だというのに……。
ユウウンが診療椅子の方を見て愕然としている。それにつられるように、俺の目もそちらに移る。
(……なっっ!?)
そこには、木っ端微塵になった診療椅子と、周りにはサザンクロスを犯していたユウウンの部下が倒れている。しかも男共は……切り刻まれ、手足が無い者も混じり、診療椅子があった場所は、大いなる血溜まりが溢れ出した噴水のよう。
「拳銃を持つ人間が悪い。
拳銃は私から一番大切な者を奪った。私から一番大切な居場所を奪った。
……許さない、拳銃を持つ者は全て敵。欠片一つ残さず消してあげる、私の前で拳銃を出すそっちが悪いのよ」
「やかましいっ! 何が拳銃だぁ? 世の中銃が正義だろうが。そう、こんな風になっっ!!」
「……っ! させないわ」
俺でも分かるほどに、サザンクロスの瞳の色が変わる!
(あれは! あの瞳は!)
瞳の色と共に一気に俺の中に流れる記憶。俺が一番知りたかった、俺が何者かという、そしてサザンクロスが何者かという重要な記憶。この赤琥珀の瞳が、俺のメモリーのトリガーだったんだ。
強烈に映し出されるのは、一番始めに見たあの部屋の中。
『…………。
俺の事を忘れろとは言わん、だが心の片隅にしまい込め!
美波お前には仁科や本郷達が居る、特に仁科はお前を本気で、そして完全に守るだろう。
居なくなる俺より、前を見て進め!!』
『っっっ!
……嫌っ!!』