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契約的束縛・誘惑なる秘密
第29章 歓喜の一夜

「何か分かったのか美波?」
「……何も……」
困った私は鼻の上まで湯に浸かり、どうしたら良いのだろうと考える。
思う事はあるけれど、確証がある事じゃない。……違う、確証だったらある。それは……。
(これって、仁科さんが話すべきだよ。私が気付いたとしても、櫻澤さんには話せない、人生を変えてしまうくらい大事だもの)
それに、仁科さん本人から、何があったのか聞きたい。どうして記憶が無いのかも含めて、しっかりと仁科さんの口から説明して欲しいと思う。
だって、仁科さんが好きではない方法だと、私は知っているから。
「……そこまで浸かって逆上せないか?」
「……え? の、逆上せるとかはあまり……」
「そうだ、あの馬鹿な傷はどうした?」
「傷? あぁ、あれはもう塞がって消えてるよ。今の私では、あの程度は傷のうちに入らないの」
「だが痛みや苦痛はあった筈だ」
「それは……」
無いと言えば嘘になるけれど、櫻澤さんを心配させたくない。一時の苦しみであれば、私は耐えられる、それに怪我も傷も残らない。
「前に仁科から、致死率は関係ないとは聞いたが、痛みが無いとは聞いていないな。ノコノコと俺達が捕まったせいで……すまん」
「私は助けたかっただけ」
「美波はずっとそうだったな」
少し辛そうな顔をして、櫻澤さんは湯に浸かる私の頬を撫でるの。
私は私の意思で捕まった。一人であれば簡単ににげられたけど、私自身がそうしたくなかったし、向こうの言う事を聞いたのも私の意思。決して櫻澤さんのせいじゃない。

