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契約的束縛・誘惑なる秘密
第29章 歓喜の一夜

「俺達全員の心を掴み、敵に捕まっても逃げようともしない。上杉組の時もそうだった、美波が時間を稼いでくれなければ、俺達は揃ってあの世逝きだっただろう」
「私は……みんなの為と必死だっただけ」
「それが何れだけの救いか、美波は気付いていない。俺だけではなく、仁科も本郷も宮野も、思う事は同じ……そんな美波だからこそ守りたいんだよ」
「櫻澤さんは、ハッキリ言ってくれるね」
「言うのは俺くらいだろうな」
私を正確に引っ張ってくれる人、そんな櫻澤さんだから、私は櫻澤さんが一番好きだと思った。勿論、みんなが好き、この気持ちには変わらない。だけど少しだけ櫻澤さんに強く惹かれた私。……でもあの時、私はもう一人でも大丈夫と言った櫻澤さん。
でもね、こうして聞いていると、やっぱり私には櫻澤さんが必要だと思う。みんなも櫻澤さんが必要だと思う。私達を本当に纏められるのは、櫻澤さんただ一人だけ。
「……櫻澤さんが必要なの。纏まっているようで、バラバラな今の私達。仁科さんは私に纏めろと言ったけれど、纏められるのは……櫻澤さん」
「美波でも出来そうだが?」
「うんん、私では駄目。ギリギリの所で弱くなってしまうもの。でも櫻澤さんは違う、しっかりと見極めて、私達を導いてくれる」
「随分な過大評価だ」
「……事実だもの」
触れている手に力が籠り、櫻澤さんの顔が私の顔に近付く。至近距離にあるのに、私の唇に触れない櫻澤さん……何故?

