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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択
◇
「本当に、人間というのは勝手ですっ!!」
「お前から見ればそうなんだろうな……。
もう時間が無いぞ、俺の事は構わずに美波達を追うんだ……ラシード……」
「っっ!!!」
山口県の拠点爆破まで後数分という時の出来事。あの時の私は、主宰の判断に怒りを感じていた。自分が犠牲になる事で皆を助ける、そんな……自分勝手な判断に。
(何故、何故、是が非でも生きようとしない? 何故、死ぬ事を選ぶ? それが美徳のように、人間は死ぬ方を選択するっ!)
このままでは主宰は確実に息耐えるだろう。それで良いのか? 私の中にある疑問と葛藤。……良い訳がない、死んで何が残る? 置いて逝かれる者の悲しみ、それは私だけではなく美波や本郷さん達も同じ。
その思いが私を突き動かす。やってはいけない方法と知りながら、私は主宰の首元を緩め首筋だけを露にさせた。
「……これで死なないという保証はありません、そして苦痛を伴うのも承知済み。それに今の私では力が弱いんですよ」
繋がりを薄くしている私では、先ほど美波から得た血が力の源。これをすれば、その半分は持っていかれることでしょう。それでも私は、この方法に賭けてみたい。気が付いた主宰にどう思われようと。
「……っ!」
もう一度牙を出し、正確に主宰の首筋に突き刺す。
私の力を与え、主宰の血を少しだけ私の躰に取り込む、それが昔から繰り返されて来た方法。一番最悪のやり方、仮眷属としての誓約の印。