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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択
◇
一通り話し、私は一息吐く。私ですら思い出したのは昨晩の事であり、そのままイン・ウードゥのマンションに行くのはルークに止められましたよ。……まぁ、理由は理解出来ますけどね。
「それで記憶が戻った気分は如何です主宰?」
「さあな。まだ完全に思い出した訳でもない。細部までは把握しきれないという所か」
「一気に全てという訳でもないんですね」
「そのようだ。それでも仁科達の事は分かるぞ、例え髪が金髪だろうが」
あぁ、今はコンラート・ゼクスのままでした。ですが日本に居た時に、主宰は此方の私を見ています。だからでしょうか、慌てる事もなく私と認識出来るのは。
「……で? 話にあった仮眷属というのは何だ。口振りからして面倒な事になっているとは分かるがな」
「私達希少種の力を流し込む事により、普通の人間より希少種に近い仮眷属に生まれ変わらせる事が出来ます。腕力などの身体能力向上と人より長い寿命を得ますが、その代償として私達と同じ血の飢えが付き纏う」
「やっぱり、櫻澤さんを仮眷属にしたんですね仁科さん」
「主宰を助けるには、この方法しかなく、迷っている暇すらもありませんでした。私達と同じ運命に落としてしまった事は、素直に謝ります」
一度してしまえば、人に戻してあげる方法は無い。
飢えと終わらない生は、主宰を苦しめるものになるでしょう。それでも私は……主宰に生きていて欲しかったんです。簡単に死ぬ事が許せなかったんです。