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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択
レンの怒り、何処にぶつけていいのか分からない怒り。理不尽な事がまかり通るのが裏社会だが、トップが忠臣を手に掛けるとは、あまり聞いた事が無い。しかもレンにとれば父親だ、その怒りは相当なもの。
「親父も俺も訳の分からない実験までされても耐えたのに、カイザー様……いや、ロンチャンは何も思ってはいなかったんだ。あの変な男の話ばかりを聞き、ロンチャンを子供の頃から見守っていた親父を捨てるなんて……あのバカヤロウっ!」
ブチッと強制的に縄が切られる音が聞こえ、レンは手当たり次第……違うな、俺に向かって拳を振り上げる。こういいのは、記憶より慣れ親しんだ感覚というのか? 咄嗟に防御から反撃へと転じた俺だが……。
(…………!?)
ただ軽くレンの腕を捻るつもりだった。だが俺のやった行動は、レンの骨が折れる音と共に、床にレンを押し倒して制圧していたんだ。
「ぐっ! ウードゥ!
どうして、俺の腕力はそこまで弱くないっ!」
「……いえ、この部屋の中で一番弱いのは貴方ですよワン・レン。借り物の腕力では、私達の誰にも敵わないでしょう。
それと主宰、もう少し力を抜けませんか? このままですと本当に殺してしまいます」
「……あ、あぁ……」
これが仁科が言っていた、仮眷属の身体能力と腕力。
同じく強化されているであろうレンを軽々押さえ付け、一歩間違えば殺してしまう程の力。
あまり変わらないじゃない、変わりすぎだ!