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恋のフィロソフィー
第1章 人殺しの顔は、
「‥‥ちゃん?お譲ちゃん?」
誰かが私を揺らしている。
揺らしながら“お譲ちゃん”と古臭い呼び方で私に声を掛けている。
眠くて仕方ない私はなかなか瞼を開けられない。
まるで糸で縫われてるみたいに思い。
頭もボーッとするし、声も少し遠くから聞こえる。
「ちょっと!起きて!ほれ!」
「ん〜?」
やっとの思いで片方の瞼だけ開けて、視界を確保した。
目が乾燥していて視界がボンヤリしている。
ボンヤリしているのは視界だけじゃなく、頭もボンヤリしている。
ゴシゴシと目を擦り両目を開けると、目の前に禿げたおじさんがいて私の顔を覗いていた。
その顔はちょっと怒っているように見えた。
「もう終点だよ?ほら起きて」
「あ〜、終点ですか。すいません今降ります」
熟睡しすぎて終点についても私は起きなかったのか。
運転手さんに迷惑をかけてしまった。
早く降りな‥‥‥‥ん?
ボンヤリしている頭が段々と状況を呑み込む。
まるで濃い霧が晴れて行くみたいに段々と段々と覚ましていく。
そして私は禿げたおじさんに聞いた。
「終点って言いました?」
「そうだよ。終点だよ」
‥‥‥‥詰んだ。