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冷血な獣
第9章 よんかく
排除……って何?
一体何するつもりなのだろう。
「鷺沼、何するつもりだ」
刺す様な目付きで龍河さんが睨み付けると、鷺沼さんは冷然たる態度で返事を返す。
「何もされたくなかったらこの部屋を出て、椿様のいる和仁家へ向かって下さい」
……嫌だ。
龍河さんが行ってしまったら、もうそのまま会えなくなってしまう様な気がする。
椿さんと結婚してしまうんじゃ……。
「……分かった。今すぐここを出ていく」
私の不安をよそに龍河さんは話すと、玄関へ向かって歩き始めた。
「えっ!? 龍河さん! ……嘘ですよね?」
「……荷物は後日取りに来る」
混乱しながら質問する私にはそう答え。
「荷物の心配はいりません。私が全て屋敷まで運ばせます」
鷺沼さんの話を聞くと、無言で再び歩き出す。
龍河さんの離れていく背中が物凄く遠い距離に感じて、私は視界が滲みそうになるのを必死で耐えた。
……嫌。龍河さん、行かないで。お願いだから。
「龍河さん、待って下さい……」
「何だ?」
喉奥から声を振り絞って私が呼び止めると、リビングのドアの前で平然としながら振り向いた龍河さん。
その普段と何も変わらない冷たい瞳に、一瞬安心したのも束の間。
「私は大丈夫ですから。何をされても良いので、部屋を出ていかないで下さい……」
「そうか。だが俺はお前の為に出ていくんじゃない。自分の為だ」
「えっ……」
「佐伯と暮らす事が俺にはストレスなんだ。だから出ていく」
冷淡に良い放つと、リビングから出ていく。
そんな龍河さんの背中を見つめながら、今度こそもう龍河さんの事を掴まえられないような気がした。