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冷血な獣
第10章 無自覚


「すまない……佐伯をこんな事に巻き込んで」

都内某所にある公園。そこのベンチに座り、肩を落とす龍河さんの姿を私は驚きながら見ていた。
珍しい事もあったものだ。龍河さんがしょげているなんて。

「気にしないで下さい! 夜の公園、大好きなので!」


隣で必死に励ます。手には開けたばかりの缶ビールを持ち、目の前の噴水を笑顔で眺めた。
まさか本当に公園へ行くと思わなかった私は、自分の言葉を後悔した。
これはこれで幸せだけど……。

「カップルが多いな……」


ぐいっと缶ビールを喉に流し入れる龍河さんへ、こっそり視線を移す。

「デートスポットで有名ですからね」
「デートスポット。……そうか」


何処となくぼーっと前を見つめる龍河さんは、久しぶりに見ても目の保養で。まさかいきなり、動揺する様な事を話し出すとは思わなかった。

「佐伯、色々と今まですまなかった」
「……どうしたんですか? 急に」
「誰でも良くて、お前と付き合ったわけじゃない」


サイボーグの様な顔をこちらへ向けると、目が合う。

「じゃあどうして私と付き合ったんですか?」


真剣な瞳にじっと見つめられると、今の状況が夢なんじゃないかと疑いたくなった。

「佐伯が可愛いから……」

ほんのりとした頬。潤んだ瞳。香るアルコール。どれも初めて前にする龍河さん。
だけど別人と思うには惜しくて、口早に尋ねる。

「じゃあどうして別れたんですか……って、龍河さん!?」

肩へ龍河さんの顔がすり寄せられ、呟く声が聞こえてくると、現実を見るしかなかった。


「佐伯。……と……ラブホに行きたい……」

……酔ってる! 確実に酔ってる!
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