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冷血な獣
第12章 強敵
「龍河さん、ここは……?」
屋敷から脱出すると、私は龍河さんが買ってきてくれた服に着替え、電車とバスを乗り継ぎ、都心部から外れた一つの村に向かった。
そこのある寂れた木造建ての家へ龍河さんから連れて来られると、一瞬疑問に思う。
「俺の知り合いが経営してる民宿だ」
玄関の前で龍河さんが答えると、漸くここへ連れて来られた理由が分かった。
「知り合い?」
「子供の頃からずっと仲が良い幼馴染だ。事の経緯を話したら暫くかくまって貰える事になった」
「そうなんですか……」
「鷺沼に見つかるのは時間の問題だが。こっちの方が断然良い。あいつらは宿泊名簿を調べて俺達を探す筈だからな」
そのまま玄関へ入っていく龍河さん。
その後に続いて、安心しながら私も入った。
* * *
一階の8畳程の畳部屋。
建物自体が古く、押し入れやテレビ、机、机の上のポット、座椅子以外何もないが、入るや否や緊張感が解けて、ほっとした。
「佐伯の服も買えた事だし良かった」
「……」
「どうした……?」
ガクッと私が膝から倒れ込むと、龍河さんが私の前にしゃがむ。
全身に滲む冷や汗。意識が朦朧としそうな程、襲ってくる眩暈。
屋敷を出てから、ずっと続く。
でも龍河さんに迷惑をかけたくない。
「何でもないです」
「具合が悪いのか?」
「大丈夫です……」
「無理するな。顔が赤い」
肩を掴まれ、顔を覗き込まれる。
「熱があるのか? 体も熱いな……。見せてみろ」
右手で私の額に触れる龍河さん。
同時に目が合うと、ハッとする。
「まさか……まだ効いてるのか?」
「っ、違います……」
どうしてバレたんだろう。
目が潤むから?
顔が赤いから?
何にせよ、耐えないと……。
昨晩みたいに、龍河さんへ迫らない様に。
また嫌われてしまう。
「椿から何か食べさせられたりしたか?」
「……いえ。何も」
「じゃあ、体に何か塗られたりしてないか? 後は匂いのあるものを嗅がされたり……」
「そういえば……」
浴場から部屋へ連れて行かれた後、体にボディクリームを塗られた。
「肌が綺麗になるって、クリームを……」
「それだな」
私の言葉を聞いて、はあっとため息を吐く。
そして……真剣に私を見据え、続けた。
「服を脱げ」