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冷血な獣
第13章 躾
* * *
「暫く寝れば大丈夫だと思いますので」
ベッドに椿さんを降ろすと、鷺沼さんは冷静にそう話す。二階にある寝室はさっき私が目覚めた場所で、壁時計の針は夜の11時を指していた。
「椿さんのこと、よくご存知なんですね」
椿さんの体に布団を掛けながら、寝顔を見つめる。顔色はあまり良くないけど、ぐっすり眠ってる……。
「私が高校を卒業してからすぐ、社長の秘書として雇って貰っているので。もう10年、椿様とも一緒にいます。椿様の事は弟の様に可愛がっていましたので……突然女子の格好をされて驚きましたが」
一瞬困った様な顔をする。
が、すぐに心配そうに寝顔へ視線を向けた。
「本人も分かっているんでしょう。灯さんを諦めなければいけないと。同性同士結婚するのを、本当は社長も反対しているんです。それに灯さんも、全くその気がないですし。だからここ最近、眠れていなかったんです」
そしてそう続けると、私の方へ視線を向け直した。
「椿様は妃南さんに甘えて、少しでも寂しさを紛らわそうとしているんです」
「……そうだったんですか」
やっぱり、椿さんは寂しさを紛らわす為にあんなことを……。
「妃南さんを好きだと思っているのも、寂しさからの錯覚でしょう。心の整理がつくまでは、さっきの様な事が起きるかもしれません。申し訳ないですが……」
さっきの事って、きっとキスの事だ。
申し訳なさそうな鷺沼さんを見ると、何とも言いづらくて困る……。