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冷血な獣
第14章 平穏な日常
屋敷を出た後、私達は私のマンションへ向かう事にした。屋敷の玄関から広大な庭を抜け、門を出たところ。雨は止み、信じられない程の晴天に自然と笑みが溢れていた。
「待ってください。二人とも」
いきなり後ろから呼び止められるとは思わずに。立ち止まって振り向き、鷺沼さんがいることに気付くと息を飲んだ。
「鷺沼さん!?」
…もしかして追ってきたの?また私達を捕まえる為に?
「…今回のことは、本当に申し訳ありません」
深々とお辞儀する鷺沼さんの姿を見ると、ある意味また驚く事になった。
「お前が謝るなんて珍しい。椿に言われて来たのか?」
フッと微笑み、龍河さんは質問する。
「いえ。自らの意思です。一つ、忠告もしたかったので……」
「忠告……?」
龍河さんが不思議そうに、ピクッと眉根を寄せた。
「本当の敵はまだいるかもしれないと、貴方に伝えたかったので……」
真剣な瞳が写すのは、龍河さんの顔。
「本当の敵?俺にか……?」
龍河さんと一緒に、隣にいる私も頭に疑問が浮かんだ。本当の敵って誰……?鷺沼さん、何の事を言ってるんだろう。
「では。私はこれで。……またいずれ会いましょう」
私達へ、ニコッと微笑む。これ以上聞くと、疑問が増えるだけで混乱するかもしれない。私と龍河さんは互いに、続けて鷺沼さんへ話し掛ける事はなかった。