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冷血な獣
第7章 振り向かない
思い返せば、私の人生の中で一生懸命に人を好きになった事はあっただろうか。
誰かの為に努力するなんて事、私には無かった。
「龍河さん、お話があるんですが」
会社の昼休憩中、休憩室で私は勇気を出して龍河さんに声を掛けた。
「何だ?」
休憩室には龍河さんと私しかおらず、窓に寄りかかって立ったまま缶コーヒーを飲んでいた龍河さんは、冷めた表情で龍河さんの前で立ち止まった私へ視線を向けた。
「私をもう一度恋人にしてくれませんか?」
そんな龍河さんの顔を見ながら、ストレートに問う。
「悪いが、……無理だ」
断られる事は、百も承知していた。
だけど簡単に諦めるつもりで、頼んだわけじゃない。
「どうしてもですか?」
「……どうしてもだ」
「じゃあ……どうして急に別れたくなったのか教えてくれませんか?」
冷然たる返事に負けじと、尋ね返す。
「理由はない。別れたいと思ったから別れただけだ」
更に冷酷な瞳で答えられると、流石に心が折れそうになった。