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冷血な獣
第7章 振り向かない
少し動けば、私の唇へ触れる場所にある龍河さんの唇。
それを静かに待ちながら胸を高鳴らせつつ、ぎゅっと目を閉じる。
だけど。
「嫌がらないなら本当にしてしまうぞ」
すぐ耳に入った冷静な声に、理性を取り戻すと目を開けた。
私が龍河さんのキスを嫌がるわけない。
けど、龍河さんは私の事を好きだからキスしようとしているわけじゃない。
その現実が、ドキドキしてのぼせ上がる私の頭を冷やした。
「男の前で簡単に目を閉じるんじゃない」
冷たく言いながら、そのまま龍河さんは私から離れていく。
龍河さんだから目を閉じたのに……どうして分かってくれないんだろう。
「すいません……」
落ち込みながら、私は離れていく龍河さんへ謝った。