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冷血な獣
第9章 よんかく

……何故こんな目に合わねばならないのか。

ドアの前に立って、涙目になる。

「私の部屋なのに……」

追い出されてから数分。

龍河さんの反応なし。

ドアを開けてもくれないし、何か話し掛けてもくれない。

そこまで私からキスされたのが嫌だったんだ……。

追い出された事より、反応がない事より、それが一番ショックだった。

「もう良いや……龍河さんに部屋をあげたって……このまま出ていこう……」

ボソッと呟くと、ドアへ背を向けようとする。

その時。

「あの――」

背後から声がし、振り返った。

マンションの廊下に立っていたのは、一人の男性。

グレーのスーツを細身の長身でスタイル良く着こなしているその人は、無表情で話した。

「龍河 灯という方はお知り合いですか?」

「えっ……」

「この部屋に灯さんが住んでいますよね?」

「それは……」

何故この人、龍河さんがここに住んでる事を知ってるんだろうか。

それに名前で呼んでる。

怪しい。

「あなたはどちら様ですか……?」

「私は鷺沼と申します」

「えっ!?」

質問の答えを聞いて、唖然とした。

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