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冷血な獣
第9章 よんかく
「……和仁社長の、秘書の方ですよね?」
「ああ……ご存知ですか?」
再び質問すると、冷静なままの鷺沼さんから返事が返ってくる。
知ってるもなにも、龍河さんが私の部屋へ住まなければいけなくなったのは、この人のせいだし。
和仁社長の秘書というだけで、良いイメージは浮かばない。
「灯さんに会わせて頂けますか?」
「えっ……それは、そうしたいんですが……」
「何か?」
仮面を被った様な表情の鷺沼さんから聞かれると、私はおずおずと答える。
「今私、部屋を追い出されてまして」
すると一瞬無言になり、
「部屋を?」
鷺沼さんは問い掛ける。
やっぱり他人に取っても、信じられないのかもしれない。
「はい」
「ここはあなたの部屋ではないんですか?」
「私の部屋です……」
「……灯さんに電話しますね」
もう一度少しの間無言になると、鷺沼さんはスーツの胸ポケットから携帯を出し、電話を掛け始めた。