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飼っていたペットに飼われています。
第70章 彼の名前(サキ目線/第1部最終回)
 観光名所の近くの人気のない静かな川辺に腰を下ろし、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「スイって…免許持ってるの?」
「当たり前だろ、馬鹿!」
「えっ? だって戸籍…。」
「…金があれば大抵なんとかなんだよ。これ以上聞くな。」
 確かに聞いちゃいけない話だったと思い、黙ったままのサキにスイが免許証を見せてくれる。そこに書かれていたのは…。
「清宮? 清宮スイっていうの? すごい偶然だね!」
「偶然じゃないよ。選んだんだ。ペットとはいえ、俺も清宮さんちでずっと育ててもらってた訳だし。もう亡くなってるから勝手に養子ってことにさせてもらってる。」
「そうなんだ…。なんか嬉しいな。」
「それに、サキも変えたくないだろうなって思って。お父さんとお母さんに貰った大事な名前。」
「…え? それって…。」
「ここでサキとずっと一緒にいるってことはそうなるじゃん? それ考えたら戸籍必要だなって思ったんだけど。」
「……そう、だね。」
 スイの真剣な想いに嬉しくて顔が赤くなってしまい、俯こうとするサキの顎に手を添え、スイが自分の方を向き直させる。
「だめ。その可愛い顔も俺のだよ。隠すな。」
「はい…。」
 そのまま優しく口付けて言う。
「まあ、もうすぐなんじゃない? サキが前に言ってた家族になるの。そしたらもう逃げないだろうから、首輪外してあげる。」
「…?」
「ペット卒業ってこと。まあ、初めて会ったときからどうやったって逃がす気なんかないんだけど。」
「うん、覚悟してる。ずっとスイの物だよ。私の…心も身体も。」
「馬鹿…!」
 そういって今度は先程より深い、まるで食べられてるみたいなキスをしたあとゾクゾクする甘い声でスイはサキに囁いた。

「…そうやってサキが煽るから今夜も寝させられなくなるんだよ。朝まで躾けるから覚悟して?」
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