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飼っていたペットに飼われています。
第24章 回想と恋慕(スイ目線)
 もう2度と会わない、そう決めてあの家から遠く離れた場所に来たはずなのにたまたま来たライブハウスの近くでサキの匂いを感じ、気づけばあのアパートまで来てしまった。
 俺には舌にも嗅覚がある。空気に混ざった僅かな匂いも判別できるのだ。
「ここにいたのか…。」
 優しいサキの香りに包まれて建物の前で佇んでいたから、前方からさらに濃い香りが近づいてきたことに気づくのが遅くなった。
 会うつもりも話すつもりもなかった。ただ、すれ違いざまにその顔を一目見ようと思っただけなのに気づくとその進路を塞いでいた。
「わっ、ごめんなさい!」
 ーーああ、サキだ。
 顔を上げた彼女は最後に見た姿から少し痩せ、幼さも抜けて美しくなっていた。
 胸の震えを抑えて平静を装い、もう少しだけ、もう少しだけ、と会話を引き伸ばしながら、ようやく自分が彼女に持っていた想いが激しい恋慕だったと気づいた。

 ちょっと脅かして初対面の男を部屋に上げるなんて、危機感がなさすぎると説教でもしてやろうと思ったが、至る所に見える過去の自分との思い出を嬉々として語る彼女の話に黙って耳を傾ける。
 俺を忘れられず再会を強く願っていることを知って嬉しい反面、自分を家族と慕う彼女に抱く汚れた想いと死体まで食べて生きてきた浅ましい自分の姿に罪悪感が募った。
 綺麗な思い出を持ったままのサキと黙って別れることが、今の自分にできる精一杯のことなんだろう。

 そう頭では冷静にわかっているのに、他の男の影が見えた途端、どうしようもなく理性が飛んでしまった。
 怯えるサキに興奮が高まる。サキの心に自分だけが残るように傷つけて噛み付いて泣かせたくなる。

 サキに初めて出会ったあの日から、俺はずっと狂ってる。
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