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コーストライン
第1章 ベルが鳴る




洗濯籠にシーツ類を入れ、叶和は縁側から庭の物干し台のところへ行こうとしたが、ふと黒電話が気になり縁側から行くのを止め、玄関先から行くことにした。

昨夜も電話の接続を外した筈。

靴箱の上にある子供の頃から見慣れてる黒電話。

接続されていた。

圭吾が出ていく時に、接続して行ったのだろう。


昼の間は休日しかいないが、殆んど鳴ることがないが、彼と付き合いだして少し過ぎた頃から夜中になりだした黒電話。

わかっている。

でも、まだ終わりに出来ない。


彼の関係も、圭吾との関係も。

そんな思考を振り切るため黒電話から視線を外し、玄関の隅に置いてあるご近所兼敷地内用のツッカケを履き玄関から叶和は庭に向かった。



干しざおにシーツを干し端と端を持ちパンパンと勢い良くシワを伸ばし洗濯ばさみでさおの近くの布を止める。

普段は洗濯設定を乾燥まで自動にしてしまうが、時間のある休日は天気が良ければこうして外に干す。

機械で乾かした時には感じない、太陽で乾かしたあのパリッとしたかわいたニオイがお日様に包まれているようで好き。

縁側のガラス戸を開け腰かけパタパタと風になびく洗濯物をボーッと見ながら、自分の終わりにしなくてはならない恋を考える。

終わりにしなくてはと思ってもまだ終わりにしたくない相対する気持ちがせめぎ合う。

まだ彼が好き。

はためくシーツを眺めつつ、暫くまとまらない想いに佇んでいた。





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