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コーストライン
第2章 黒電話
「あれ、今日バイト
ただいま」
「おかえり、イレギュラーのレポート課題の提出で替えてもらった」
「学生は大変だね」
「自分んだって学生だった時あるじゃん
コーヒー入れるけど飲む?」
「専門だもん
あ、コーヒーはいらない
ありがと
明日も仕事だからシャワーして寝る」
「社会人も大変だな
シャワーより風呂沸いてるから入れば」
「珍しいー」
「もうすぐレポートも終わるから、久し振りに風呂でも入ろうかと思っただけ」
「ラッキー、じゃあお言葉に甘えて
レポート頑張ってね」
「はいはい、ソチらも今日の疲れを癒やしてください」
「ありがとー」
圭吾と同居して、生活のリズムが合わないのでお互い干渉しないが、時折時間帯があったときは、この様にさり気なく叶和を気づかう。
それを叶和が気づいているかといえば否ではある。
今日の締め括りはラッキーだったな
と風呂に浸かり疲れをいたし心地よい眠りに着いた叶和だった。
圭吾と同居するようになってしばらくして、叶は駅ビルの店舗に出勤していた。
先程から、叶和とカウンター越し対面しているお客様の接客をしていた。
新色のルージュの色でお客様が迷っている。
二色まで絞り込んだらしいが、どちらを選ぶかで迷っている。
両方お薦めして両方お買上げ頂くという手も売り手としてはあるが、流行りは廃りも早く買ったルージュが使われなく処理されるのも偲びないと思う叶和は、お客様の意向に合わせて接客していた。
「お客様のお顔立ちには、コチラのお色の方が栄えると思いますが」
「そうかしら、迷ってしまうわ」
見た目がふんわり緩やかなお客様が今だに迷っているところ、
「コッチの色が似合うよ」
叶和が薦めた色のルージュを取り、お客様に向かって微笑む男性。
叶和はその見知った男であってそれが見知らぬ男を見ているようであった。