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コーストライン
第3章 さざ波
叶和はロビー前、脇の車を待人のため設置されているソファーに座り、車を待っていた。
見慣れた車が来たのを確認して立ち上がり、相手も叶和を確認して立っているところに車を停める。
自分で素早く助手席のドアを開け乗り込む。
早い時間に呼び出されたことに、圭吾は触れず叶和がシートベルトをしたのを見計らって車を再び発進させた。
ホテルの敷地内から国道に出るため圭吾はウインカーを家の方に出した。
「反対に行って
少し遠回りして帰りたい」
圭吾は出したウインカーを反対にウインカーを出し変え車を走らせる。
車内は車を走らせるエンジンの音。
叶和はカーオーディオに手を伸ばし、ラジオのスイッチを押し音量を絞る。
微かに車内に音が溢れる。
早い時間と言っても、ラッシュ時間を超えた国道、車はスムーズに進む。
叶和は窓を開け、外の空気を吸い込む。
ざわついた心が少し、落ち着く。
「どこまで流します」
「チョット、考えたい」
「OK」
車に乗って初めて交わした言葉。
その後も、車を停めるまで言葉を交わすことなく、微かに聴こえるラジオから流れる曲、開けた車窓から移りゆく夜の景色を叶和はじっと見つめていた。
海沿いの国道をひたすら走り海側に通じる小道に入る。
そこは初めて圭吾と対面したウインドサーフィンの会場から近い場所だった。
人気のない駐車場に圭吾は車を停めた。
「降ります」
「降りる」
二人は外に出た。
「そこから浜辺に行けますよ」
そう言い残し、圭吾は反対側の駐車場の入り口に向かって歩き出す。
叶和はそれをなんとも思わず、浜辺に行こうと圭吾とは反対に歩き出した。