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コーストライン
第4章 ココア
バスルームから聞こえてくる水音を聞き、身じろぐこともせずベットに沈んでいたその躰を起こし、サイドボードに置いてあるカレの煙草に日をつけた。
ジッポからの鼻をかすめる、オイルの匂いとカレの煙草からの少し重い乾いた草の香り。
いつの間にか嗅ぎ慣れた匂いに胸の奥がツキンと痛んだ。
アレからも、何事もないようにカレは叶和に連絡をしてくる。
叶和も木内の二次会でカレと会ったこと、その横にいた女性のことを問い質すこともない。
きっと問い質せば、この関係も壊れるだろう。
薄々は、感じ取っていたこと。
カレが再会してから、叶和に叶和とのこの先の話をしないと言うことを。
口に拡がる、苦味のある重い煙を肺に吸い込む。
口から漏れた煙は部屋に漂いながら消えていく。
例え、カレとの先がないとしても、今はカレといたかった。
一本を吸い終わる頃合いで、カレがバスルームから出て来て、自分の衣類にてを伸ばす。
「今日は一緒にいて欲しい」
いつもは言わないそんな言葉が、叶和の口から漏れた。
「オマエはゆっくり休んでいけ」
カレが服に伸ばした手を止め、叶和の頭を撫で頬に手を添える。
「ううん、ごめんワガママ言って」
頬に添えられた手を叶和はそっと掴みその手を離す。
「私もシャワーしたら出るから、アナタは先に行って」
ベットを抜け、そのままバスルームに向かう。
「また、連絡する」
叶和を見ずに、カレは身支度を整える。
そんなカレに、叶和の心が蟠りができるのを感じる。
「待ってるわ」
叶和は、バスルームのドアを閉めた。