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コーストライン
第4章 ココア
足取りは重く心に蟠りを持ったまま、家路についた。
玄関の戸を開ける前から、微かに電話の音が鳴っている。
余計に気分が沈む。
好きと言う気持ちだけで突き進める頃は過ぎてしまった気がする。
玄関の戸を開け、徐に電話を取る。
相手は、相変わらず無言を通す。
「モシモシ、アナタはカレのなんですか」
叶和は一言言い放ち、電話を切る。
いつもなら、相手が切るまで叶和は切らない。
切る直前、相手が息を飲み込むのがわかった。
いつまでも、黙っているわけにはいかない。
結論を急ぐわけではないが、なんとなくオカシイと思っていたのにココまで引き伸ばしたのも自分。
誰かが傷つかず、そして自分も傷つかず済めば良いのだけど。
そんな綺麗事はある筈もない。
「おかえり」
そんなことを切った電話を眺めながらぼんやり思っていたら、キッチンから顔を覗かせた圭吾に声をかけられ我に帰る。
「ただいま」
「コーヒー入れたけど飲む」
「ココアがいい」
「少し時間かかる」
「着替えてくる」
「了解」
ヒールを脱ぎ玄関を上がり部屋に向かう。
圭吾はキッチンに引っ込み冷蔵庫から牛乳を取り出し火にかける、その間に蜂蜜を取り出し沸騰しないようにスプーンでかき混ぜながら蜂蜜を垂らす。
ココアパウダーを温めた牛乳に混ぜて玉にならないようゆっくりと混ぜる。
叶和のマグカップに注ぎ終えたとき、マグカップの持ち主がキッチンに現れた。
「ちょうどできたよ
どこで飲む?」
「ココでいいよ」
椅子を引き、マグカップが置かれた席に座って、叶和はココアをすする。
「甘味が足りない」
「遅い時間だし、女性の心理を配慮して蜂蜜にしたけど」
「糖分は糖分じゃない、今更」
「気の持ちよう」
「お気づかいありがとうございます
美味しいよ」
「それはよかった」
圭吾は自分の冷めたコーヒーに、口をつけた。