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第4章 高野 皐月
「…お母さん、は…」
お父さんは辛そうに顔を歪めて、ふるふると頭を振った。
「分からん。実家のあったあたりも焼けてしもて…心当たりは調べ尽くしたけど、何の手がかりもなかった。お前のことを教えてくれた看護婦さんも、施設に預ける前に病院の近くの防空壕を当たって調べてくれたらしいけど、何も分からんかったと言うことや…」
「……私の。正直な気持ちを言うていいですか?」
お父さんは辛そうな顔のまま、小さく頷いた。
「私のこと、捨てたんやないということは解りました。でも、やっぱり私の親は、育ててくれたお父ちゃんとお母ちゃんだけなんです。初めて会った人を、お父さんとは、呼べません…」
お父さんは唇をひき結んだまま、ひとつ頷いた。
「…やっぱりな。そう、言われると思うとった…そこまで望んどったわけやない。春に、高野さんと会うて、皐月がどんだけ可愛がってもろうてたか、写真を仰山見せてもろうた。」
喋りながら、お父さんの目には涙が浮かんで。
鼻をすすりながら、袖で目を拭った。
お父さんは辛そうに顔を歪めて、ふるふると頭を振った。
「分からん。実家のあったあたりも焼けてしもて…心当たりは調べ尽くしたけど、何の手がかりもなかった。お前のことを教えてくれた看護婦さんも、施設に預ける前に病院の近くの防空壕を当たって調べてくれたらしいけど、何も分からんかったと言うことや…」
「……私の。正直な気持ちを言うていいですか?」
お父さんは辛そうな顔のまま、小さく頷いた。
「私のこと、捨てたんやないということは解りました。でも、やっぱり私の親は、育ててくれたお父ちゃんとお母ちゃんだけなんです。初めて会った人を、お父さんとは、呼べません…」
お父さんは唇をひき結んだまま、ひとつ頷いた。
「…やっぱりな。そう、言われると思うとった…そこまで望んどったわけやない。春に、高野さんと会うて、皐月がどんだけ可愛がってもろうてたか、写真を仰山見せてもろうた。」
喋りながら、お父さんの目には涙が浮かんで。
鼻をすすりながら、袖で目を拭った。