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初恋
第4章 赤い屋根のうえ
見つけろ。
きっと、この辺りなんだ。
この辺りの家からなら、あの場所がよく見える。
「……ねぇ」
──って、なんだよ。
人がせっかく集中してるのに。
呼び掛けられた俺が面倒くさそうに振り向くと、隣の彼女が背伸びして──
コツンと
近付けたおでこを、俺の額に軽くぶつけてきた。
無論、俺は……
固まらざるを得なかった。
「ふ、ふふっ。怖い顔してたわよ」
「……!?」
「そんなに焦らなくっていーの。だってわたし、あなたとこうして一緒にいる時間が……楽しい、もの」
──反則だった。
俺は咄嗟に肩を突き飛ばした。馬鹿だ。間違えた。キスすればよかった。
こんな小悪魔な台詞を、素の大胆さで言われても……
免疫のない俺では、対処できない。
「──あ」
「……ぇ」
突き飛ばされたというのに無邪気に笑い続ける彼女が、ふいに手をあげる。
そして指差した方向を、俺もつられて目で追った。