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初恋
第5章 君がくれたもの


春になればサクラの木々が、この場所を華やかなピンクに染め上げる。


秋がくればイチョウの木々が、鮮やかな黄色で一面を覆うんだ。


過去の君が赤い屋根から眺めていたのは……この公園だったんだろう?




「──…なら、夏はどうなるの…?」



「夏はどっちも緑色。冬は──こうして……、ふたり仲良く散るんだ。次の春にそなえて」



「……そう……なんだ」




君の声が少しずつ小さくなる。


眠りにつくように呼吸が浅くなる。


俺は身体の震えを止めるために、君の体温を感じようともう一度、唇を重ねた。


君からの反応はなかった。


でも十分だった。


もう十分、君から大切なものをもらったから。


君が最期に俺にくれたものは、俺の人生の色を少しだけ塗り替えた。



「……ハ」



いつぶりだろうな……。


公園の砂場で倒れている俺は、いつぶりかわからない穏やかな顔で笑っていた。


やっと手に入れた温もりにすがりつきながら──。


君からの贈り物を、なくさないように。












                 初恋(完)
                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



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