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***堕散る(おちる)***
第2章 step2魔が差す
別に欲しかった訳でもない、むしゃくしゃしていた。
店内の人たちは楽しそうだったし、彼氏には恋人がいて、ワタシはメール一つでほったらかされている。
いいよね?店員はレジで忙しそうだった。
なんか一つくらいあってもいいよね?
きっと可哀想なワタシに誰かがご褒美くれるかも…
ワタシはピンクのリップを棚に戻さずスカートのポケットに忍ばせた。
気に入ったものが見つからないというフリをしてアタシは店を出る。
店員は相変わらず忙しいようで、誰も追ってはこない。
脚は縺れそうになりながらも平然を装い歩く。
一歩、一歩、あとは店の角を曲がればいいだけだ。
終業式の今日、この街はごった返している。
…ぇ、ねぇ
「ねぇ、ねぇ君」
ワタシは自分が呼ばれているとは思わなかった。
曲がり角まであと数歩。
いきなり後ろから腕を捕まれる。
「ねぇ、君だってば。」
腕を引っ張られて振り向いたワタシは、スーツ姿の男に呼ばれているのに気づく。
「何ですか?」
ナンパかキャッチだと思い睨みつけ腕を振りほどこうとした。