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キスをして
第9章 小塚の本懐
癖のあるふわふわの髪を撫でながら子供みたいな大人を静かに抱え込む。

「……律…凄く怒ってる?く‥苦しいんだけど」

「あぁっ!ごめん!ちょっと浮かれてただけで怒ってないよ!?」

誠司の髪が乱れてしまうほどきつく抱き締めていたらしい。
昨日に続き今日までも力加減の効かない自分が恥ずかしい。

「酔い覚めた?」

「?大分覚めたかな」

「じゃあする?」

何を?と問いかける前にセーターの下に滑り込んだ手で意味を理解した。

「誠司!今日お店開けるんじゃなかったの!?」

「臨時休業に書き換えたから心配ないよ」

「出掛けるんじゃなかったの!?」

「夕食に出掛けるつもりだったからまだ大丈夫」

「コーヒー冷めちゃう!」

「淹れ直してあげる」

「ねぇ誠司っ」

「いや?」

そんな顔で見ないで…。36歳は可愛い子振る歳じゃないでしょって思うのに下から見上げられる顔に絆されそうになる。
背の低い女の子が可愛いと言う男はこれを味わってるのか?だとしたら可愛いは正解だ。

「まだ昼だし‥明るいし」

「そんなの今更だよ」

「だって…」

「抱かせて‥律に触れると落ち着くんだ」

「それズルい」

私の言葉に渇いた笑いを向けながらブラのフックを外した。
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