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キスをして
第12章 律香と誠司
皆して俺の事おちょくるんだもんなぁ。
真木もうちに馴染んできたみたいだし、りっちゃんも小塚さんと付き合ってから話に参加するようになったしなぁ。

一人会話から逃げてきた日下は保護者にでもなったかのように考えを巡らしながらトイレを出た。

今戻ったらまだ会話続いてんだろうなぁ。

餌にされたくはない日下は席とは反対に歩き会場の出口へと向かった。
出口に近付くと入店する女性達がいかにもトキメキましたと言わんばかりに華やいでいる。

まさか···

自分の予想を確認しようと出口から外を覗くと小塚さんが出口付近のベンチで電話をしていた。
通り掛かる女性の視線や声を気にも留めない姿は慣れているとしか思えない。
モテるのは羨ましいが自分ならあんなに普通には出来ないと思う。
絶対に調子に乗ってしまう。

りっちゃんはいつもこの状況の中に居るんだよなぁ。
何だかお兄さんは心配だよ。
電話も何か怪しいしさぁ。
彼女の会社の飲み会に来てるのに電話長過ぎじゃないか?

よし!ここはお兄さんが探りをいれてやろう。

俯き加減に電話をしている小塚さんに見付からないように壁沿いに小塚さんの背後にある植木の陰に移動する。

「ちゃんと言うよ────そんなすぐに言えるわけないだろっ」

ん?

「──仕方ないだろ。跡は俺が継ぐことになってたんだ···律の事はどうにかする───分かってるよ。それでも俺は跡を継ぎたい」

「!!──!?··─」

「取り敢えずはスイスの支店に戻って現場を整えてから本店に戻ることになる───彼女は仕事が好きな人だから」

──────!?

は!?何?なに!?

動揺している間に電話を終えて宴会に戻ろうとする小塚さんを放っておくことは出来ない。

「あのっ!!」
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