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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆
12月23日。
クリスマス前のソウルはいつもより笑い合っているカップルが目立っていた。
そんな中でスーツを着た女が一人ガラガラと煩い音を立てる安物のスーツケースを持って歩いている。
こんな姿日本の友達に見せたくない……と思っていたけど、どうやらそれは無理そうだ。
大学時代の友達が私のフェイスブックの投稿を見て連絡をしてきたのだった。
「リサ、韓国居るの?!」
「私たちも観光でいま韓国なんだよね~良かったら夜ご飯でも一緒に食べようよ!」と。
「こんな時期に観光で韓国に居るの?あんたらも、中々根性あるわねえ。」
「お!さすが論文で反韓感情を剥き出しにしたリサだけある言葉だね。」
「音楽と”ドクト”は関係ないのよ。ま、お昼は仕事でしょ?頑張って!場所は連絡しとくわ~」
一方的に電話を掛けてきて、一方的に電話を切られる。彼女は冬の風の様な女だ。
そんなに仲良くもないけど、仲が悪い事もない。それだったら異国の地で一人、寂しくマックを食べるよりも彼女たちと夕飯を食べた方がまだマシだろう。
画面を見て苦笑いを浮かべた私のマフラーが、本物の"冬の風"によりゆらゆらと揺れる。
家で焚いているローズマリーのお香の香りが鼻についた。韓国独特の臭いに染まっていないマフラーに何より安心感を覚えた。
「よし!仕事だ!」
気合いをいれてから、ロッテホテル前のタクシーに乗り込む。
今から韓国支部の支部長に会う、電話とメールのやり取りしかした事がない──どんな人か楽しみだった。