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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆

「あ!」

「昨日ぶりだね」


「え?知り合いか?」

また違う声が聞こえたけど無視した。

先程名刺を下さったこの会社の会長の声ではない。世渡り上手な私は『咄嗟の損得判断』が誰よりも達者なのだ。


「昨日はライター、どうも」

「ああ、いえいえ。」



「だから、知り合いなのかって聞いてるんだけど」

次はまさかの日本語で聞こえてきたので、さすがに声の主の顔を見る。


これまた端整な顔立ちをしていた。

韓国人ってイケメン多いのか?と思ったけど、名刺を見る限りここは芸能事務所。BNエンターテイメントと書いている。

———そりゃイケメンしか居ないはずだわ。


「あ、どうも。柳沢リサです」

日本語で挨拶をして、しつこい彼にも名刺を渡した。

ライターを貸した彼も背が高かったけど、この人も背が高い。ヒール無しで153cmの私と25cmくらいは差がありそうだ。

きっと180cmにかかるか、かからないかだと思う。どっちにしと高身長である事には違いない。


白色のハットを被り、黒と白のボーダーのニットを着ている目の前のイケメン。あの有名なシャネルのものだ。胸元のマークが厭らしくない程度に目立っていた。

下は冬らしく黒色のスキニージーンズ。椅子にかけてあったジャケットもチラッと見ただけで分かった。『シャネル』のものだと。



「……ヤナギサワ、ね」

「Hahaa...фамилия!」
(呼び捨てかよ!)


悪気はないんだろうけど、呼び捨てで——しかも苗字を呼ばれてイラッとした短気な私はロシア語で呟いてやる。

何て言ってるか分からないだろう、と言いたげな意地悪な顔をして彼を見た。


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