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シャネルを着た悪魔
第8章 ☆CHANEL NO8☆


「それは間違っていないだろう」


「はい。私もそう思います」

「彼は、『誘拐犯を憎まない変わった女』に惚れてしまった『変わった男』であり、それと同時に凄く強がりで、優しくて──。」

「センスの有る男性です。芸術センスも生き方も、全てにおいて。」


ユナさんの言った通りだ。

韓国で腹を割って誰かと話す事なんて『絶対』にないと思ってた。でも──それは崩されたんだ。何故なら、今私が話した彼への思いと自分の思いはウソ偽りない本心だったから。


「そう思われてテヒョンも幸せだろうな」

「どうですかね。案外ウザったいと思ってるんじゃないんですか」


「ははっ、それは無いだろう。アイツは一途なヤツだよ。強がって格好を付けたい性格だから『契約期間は半年で良い』なんて言ってしまうだけだ」

「本当はリサさんに死ぬまで側に居てほしいハズなのにね。それを素直に言えないんだ。優しいが故に相手を気にして、強がりが故に要らない言葉を紡いでしまう」


「──そこまでご存知なんですか?」


「そりゃ何てったって帝国グループだからね」




「……ってことは」


「やっぱり……。」



私が続きを話そうとするのを、静かに阻止したイさん。

自らの口元に持って行った人差し指は年齢に似合わず、とても綺麗で真っ白だった。腕にはバレンシアガのシンプルな皮時計が光っている。


「テヒョン、聞いてるんだろう」


彼の言葉が、テヒョンの背中を押したのかもしれない。何とも言えない様な顔をして戻ってきた。──私の隣の席に。


「イさん!」

「何だい?」


「居たの知ってたのなら──「ダメだよ。リサさんも強がりだ。こういう時に相手の腹の内を知っとく方が後々良い事になるからね」

「良い事って……」



「私からすれば、テヒョンも強がりだがリサさんも相当だ。そんな二人がたかが三か月とは云えこうやって仲良く過ごしてるのも」

「私の元へ彼が連れてくるのも──自分の本性を明かすのも」


「正直、信じられないよ」



「ヒョン、信じられないって何だよ」



「でも続きがある。」


『信じられないからこそ、信じたいんだ』




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