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シャネルを着た悪魔
第9章 ☆CHANEL NO9☆
「ねえ!テヒョン!」
「朝からうるせえんだよ。自分でそれくらい決めろや」
時刻午前7時半。珍しく家を出る時間が重なった私達は、一緒に朝食を食べてから同じタイミングで歯を磨いたり服を着替えたりしていた。
イさんとご飯を食べてから一か月。──何だか、心の重荷が取れた感じがした私は、せっかくなら彼と一緒に近くまで行けたら……何て思ってたのに、我が家は朝からこの有り様だ。
「何で?いつもなら、頼んでも無いのに色々と口出してくるじゃん」
左手には三枚のワンピース、右手には沢山のハット。
そう、私は彼にコーディネートのアドバイスを欲したのだ。
「それはそれだろ。第一、たかがオル大の集まりだろうが。そんな気合い入れていく必要がドコにある?しょーもねえ女ばっか居る様な所だろ」
「……。アンタが先に言ったんじゃん。あそこはバーキンで通学なんかザラだからお前自身が潰されないためにも気合い入れて女を磨く事と学問に集中しろって」
「だから何度言わせんだ?今日は学校か?ああ?勉強してくんのか?」
「────。」
「な、違うんだろ。今日は『休学』だ。おめえらが、勝手に校舎使って集まる云わば学園祭みたいなモンだろ。」
「そういう時こそ気合い入れたいのが女心じゃないの……」
「ああ?聞こえねえんだよ」
かなり機嫌が悪いみたいだ。
どんなに忙しくして帰宅しても、ここまで啖呵切られる様な事は一度もなかった。仕事とか他の交友関係は一切家に持ち込まないのが彼のポリシーだったはずなのに──。
よほどの何かがあったんだろうか?
「……忙しい時にゴメン。自分で考えていく事にする」
「………。」
案の定返事はなかった。
いつも相槌なんて無いのに、この相槌が無いのは少し心がドコかに行ってしまいそうになる。
手に持っている中から、ブラジル女性が好きそうなタイトのワンピースを取った。
肩がレースになっているからブラジャーは、パッドにした方が良さそうだしパンツの線が見えるのもイヤだから今日はティーバックかな。
髪も整える事なく、目の前の雷落ちる寸前のテヒョンと兼用であるシャネルのベレー帽を合わせる事にした。