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シャネルを着た悪魔
第2章 ☆CHANEL NO2☆
きっと私の宿泊先がロッテホテルだと上層部にバレたのだろう。
いきなり会社がケチな事を考えたから人生で初めて格安航空会社の飛行機にのった。
出発が遅れるわ、天気のせいで中々着陸できないわ、滑走路は後回しだわ——という災難ばかりが続いたせいで終電を逃して乗り換えしようとしていた駅で一人、どん詰まりの状況。
12月27日の深夜。
タクシーも居ないので何故かと思って調べてみたら、この辺りで有名な歌手のコンサートがあったらしい。皆はしゃぎ疲れてタクシーで帰ってしまったのだろう。しかも年末だ。
時間的にもバスも他の沿線の電車もない。
携帯の充電が15%を切った時、運悪く……いや運良く電話がなった。
登録はしていないけど下四桁で誰か分かる。
「リョウ~!」
「よう起きてたんだ。てか帰国したんだな~」
のんびりとした話し方だった。
「それがさあ……今どこに居るの?」
「今ァ?撮影の帰りで、神沢通りだけど」
「神沢?ナイスタイミング!あのさあ、実は——」
といって事情を説明した。
だけど冷静に説明できるはずはない。
所々『LCCはターミナルが違うから免税店でお目当てのやつも買えなかったしさぁ』とか『遅れること有名なんだから会社も、せめてもうワンランク上の航空会社使うべきやと思わん?!』という愚痴が入ったのは言う間でもない。
「だからリョウくん~!飛澤駅まで迎えにきて~!」
「飛澤?」
と聞き返された所で耳に憎い機械音が響く。
………今日までお喋り好きな自分を恨んだことはあっただろうか。
あともう少しで『うん!そうだよ!待ってるから』位は言えたのに——私が言ってもどうにもならない様な愚痴を挟んだからだ。
まるでアニメの様に分かりやすく肩をおとした。
潰れかけたタバコ屋さんの様な所の前でタバコを吸う。
飛澤なんて来ないから、どこに公衆電話があるかとか、どこにコンビニがあるかとか、全く分からない。
そして全くタクシーが居ない。今回の韓国出張は中々充実したものになったけど、本日の日本は最悪だ。
27の、年末。
私は飛澤駅で一人呆然としながら、タバコを吸い続けた。