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シャネルを着た悪魔
第11章 ☆CHANEL NO11☆

──どうしよう。

昔流行った脳内メーカーをすれば、私の脳みその中は今、この五文字で埋め尽くされている事が明らかになるはずだ。

夕方の18時。カラスが鳴きながら帰路につくほどの田舎町を歩きながらスマホをタップした。国際電話特有の説明が流れてから、直ぐに愛し──いや、今は愛しくない。

ただ、怯えるべき相手が電話に出た。


アート財閥の事で、本音を確かめようと家から電話した時は早く出てくれた事に対して喜びを覚えたのに、今は全く嬉しくない。

「何だ?」

「………。」


「もしもし?一日に二回も電話してきやがって、何なんだよ」

憎まれ口だけど、本音ではなさそうだ。

「あのさ、怒らないって約束してくれる?」


「───はあ?」

電話越しからティーの声が聞こえた。ガヤガヤしているからメイク室か前室かの何方かだろう。時間的にも屋外では無さそうだった。

「寂しいだけなら、俺も今からメイクだし切るけど」

「違うんだって」


「だから何だよ」


「怒らないって約束してくれるの?」

「……そんなの内容によるだろ。でも怒らない様に努力する。で、本題は?」


忙しいのか、私の勿体ぶった態度がイヤなのか。

多分『両方』だろうな。


お昼も来た質屋のドアを閉めた瞬間に、気合いを入れた。



『どうせ長引いても直ぐに言っても怒られる事は怒られる。』


と心の中で子供の様な事を復唱したのは言うまでもない。


「財布失くした」




「………ああ!?」



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