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シャネルを着た悪魔
第11章 ☆CHANEL NO11☆
「おめえ、ふざけてんのか?!」
耳に響く怒号。そりゃ無理もない。
「あん中にどれだけの個人情報入ってると思ってんだよ!」
そう──財布に入ってるカードはテヒョンの名義。他にもBNに入る為のカードとかマンションのルームキーとか。
私が再三、申請してやっと手に入った日本の保険証なども入っていた。
現金幾らとかそういう問題じゃないんだ。
「……怒んないって言ったじゃん」
「──さすがに、これは怒るわ!」
「……ごめんなさい。」
素直に謝られたことに拍子抜けしたのだろう。まるで小原くんが復活するのを聞いたファン達の様な表情になってることが想像出来る。
「はあ。とりあえず寄った場所に電話するなり何なりしとけよ、分かってんのか?」
「はい。」
寄った場所──。駅前のサンマルクカフェと新幹線、そしてリョウの事務所くらいだな。
「カードは止めとくから。……分かってると思うけどお前が付き合ってるのは、一般人じゃなくてこの俺なんだ」
「……。」
「ソンテヒョン名義のブラックが落ちてて、その中にお前の身分証明書が入っててみろ。すげえ事になるのは想像出来るだろ」
「うん。」
「──誰もお前の事を怒ってるわけじゃねえんだよ、心配してるんだ。」
あんなに怒っててよく言うよ!と言い返したい。でも止めた、何故ならその行動はあまりに稚拙だから。
「サセンが日本にも韓国にも居るのは分かってるだろ。で、このSNS時代だ。」
「ごめんなさい。」
「分かったなら良い。ったく忙しいのに用事増やしやがって……」
「どうせリョウの事務所にも行ったんだろ?確認の電話入れとけよ」
「何で番号交換した事知ってるの?」
「そりゃ大体は想像つくだろ。っまあ、そういう事だからお前もやることやっとけ。俺も連絡しとくから」
「はーい」
呑気な返事にイラっとした彼は、なにも言わずに電話を切った。
新幹線では財布出してないし──有り得るとしたら、リョウが私の鞄を漁ったあの時だ。
もう既に暗くなり始めている道に怖さを覚えながら、続け様にリョウの番号を鳴らした。