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シャネルを着た悪魔
第14章 ☆CHANEL NO14☆
静まり返った会場にはテレビなどで見ていたよりも、さらっと乾いた様な銃声が響く。
「……ああっ!」
事を理解した──観客たち、そう後少しで完成のパズルを一生懸命に、作り上げた陰の立役者たちは一斉に悲鳴を上げだした。
イスラム国によるテロ等様々な事柄が問題視されているこの世の中。
たった一発の銃声はこれほどまでの威力を持つ。
庇う様に彼の目の前に立ち……
そしてものの数秒で倒れこんだ私の左太ももには、黒色のドレスが変色してしまう位の血が溢れ出ていた。
だけど──不思議な事に刺された時よりも痛くない。
いや、痛いんだけど。
何なんだろう──ジンジンとした様な痛みではなかった。
「リサさんっ!」
私の肩を抱き上げる会長とは反対に一目散に逃げ出す奥さん。
この姿までもがケネディ夫妻と同じなんだ。
確か彼が暗殺された時も──
彼の妻は庇う事なく、心配する素振りもなく車から逃げ出した。
なんて皮肉なんだろう。
ボディーガードに取り押さえられた女性は何か言葉を発している。だけど韓国語でも日本語でも……英語でもなさそう。
朦朧としてゆく意識の中で私が最後にはっきりと見た顔は──愛した彼のお父さんの顔だ。
「リサさんっ!目を瞑るんじゃないっ!」
「おい、イ!救急車だ!」
「まだやり残した事が有るんだろ?」
「……息子を置いていくと言うのか?」
「なあ、頼む」
「愛子の様には成らないでくれ──。愛し合うべき人物と、しっかりと愛し合ってくれ」
「悲しい結末を愛している息子にも、そんな息子が大事にしている君にも味わって欲しくないんだ」
アメリカ仕込の本場の英語はとても綺麗だった。