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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆
「何で俺がそんな笑えねえ冗談言う必要が有るんだよ。この二週間、事務所とも各スポンサーともメンバーとも死ぬほど話し合った結果だ。」
かっ走るマイバッハには、どの車も付いてこれないんだろう。
いや──付いて来たくないのかもしれない。
「どうして?……私、サファイア好きだった。」
「どっちにしろ、活動は休止する事になるって話だったんだ。時期が曖昧だっただけで……。メンバーは兵役に行く事になる。」
「五人全員?」
「いや、俺は──オンマの都合でフランス国籍だから兵役義務は無い」
「はあ?!」
響く私の声。
あまりに大きかったその声に、テヒョンは目を細めて睨んできた。
私の方こそ睨んでやりたい。何で決まってから報告するの?
──いや、男の仕事の話に口を出すつもりはないけど、話し合ってる時点で、せめて少しくらいはどうなってるか・どうなりそうか教えて欲しかった。
「オンマはフランスで俺を産んだ。親父と出会った場所だから、だと思う」
「ファンの人は知ってるの?」
「国籍、か?知らないと思う。メンバーは入国とか出国の時に違う列に行く俺を見てるから全部知ってるけどな」
「じゃあ韓国にこうやって居れるのは、私と同じVISAなんだ。」
「まあ──分かり易く言えばグリーンカード。親父がどうにかしたんだろ」
「そっか。お母さんも国籍は日本だって言ってたもんね。」
テヒョンとテヒョンのオンマは、二人ともグリーンカードを持ってたから何事もなく韓国で生活出来てた訳だ。
それなのに二人とも韓国籍じゃないなんて──不思議な感覚。
だけども、ひとつの問題が解決したからと言って開いた目は中々収まらない。
最も大事な問題の──核心に触れていないからだ。
「テヒョンは、テヒョンは……どうするつもりなの。」
分かってる様で分からない答え。
灰皿に雑に煙草を潰した彼は、意味も無く高速に乗った。このまま行けば海が見えると思う。
「俺は──」
「俺は、帝国を継ぐ。」