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シャネルを着た悪魔
第17章 ☆CHANEL NO17☆

はじめて、テヒョンのオンマが会長にあげたと云う靴べらを触らせて貰った。

目で見ていたよりも、ずっと使い古している感じがする。

きっと……これを使ってる時は、愛子さんとの良い思い出が頭に浮かぶんだろう。


彼なら、もっと良い靴べらを買えるだけの時間もお金も有るのに──、それをしない事に愛を感じた。


「今日は本当にすみません、わざわざ訪問して、会議の時間もズラしてもらって……」

「イが上手にしてくれてるから大丈夫だ。それよりも──あいつの事をよろしく頼んだ」


「……。」


「リサさんの目から見ても分かるくらい、あいつと僕は似ているんだろう?」


「じゃあきっと愛する女性が……自分の側から居なくなれば、立ち直ることなんて出来ないはずだ。」

「僕みたいに一生、何かすごく重いものを背負い続けるよ。」



「──私は、テヒョンの癒しになりたいと思ってます。」

「テヒョンの荷物になるつもりは無い。」


笑顔で言い切った。

それがどんな荷物かは分からない。心の荷物?それとも金銭的な荷物?

どっちにしろ『重い』と思われるのはイヤだった。


だからこそ、離れるんじゃなくて……怒るんじゃなくて……ただただテヒョンの事を信用する、と決めた。


「ああ、そうだ」

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