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シャネルを着た悪魔
第17章 ☆CHANEL NO17☆
ドアに手をかけた私を呼び止める彼。今日のハイヒールが高いからかな?

彼は室内に居るはずなのに、私とあんまり身長が変わらない。

「何ですか?」


「これからは『会長』なんて呼び方は止めて僕の事は──」

「『アボジ』と呼びなさい」


「──。」



「バカな息子二人しか居なかったからね。娘からお父さんと呼ばれる気持ちがこの年になって分かる事になるとは……」

心底嬉しそうな顔をしている目の前の会長──じゃなくてアボジ。

そう……お父さん。


どこか照れ臭くなって私が顔を逸らした。


「──ちゃんと伝えに行ってくる」

「……行ってきます、アボジ」



「ああ。行ってらっしゃい」


見送られた背中。

受け入れられた思い。


この二つは、きっと韓国国内で一番の強さを持つだろう。


そんな二つの武器を右手に──

薬指に輝く『本物の資産』という名の武器を左手に──。


用意してくれたリムジンに乗り込んで、運転手さんに迷う事なく行き先を伝えた。


「ハイアットタワーまで」


──私達が住む、あの家。


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