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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆

「ちょっと、今度は何?今日の嫌味を返してるワケ?」
「──ったく、何でお前はそんな風にしか物事を捉えられないんだ?」
「テヒョンこそ、何で冗談だってわからないわけ?で何なのよ」
「……馬油だよ」
「馬油?」
「そう。」
「何で顔に塗るの?馬油シャンプーとかなら聞いた事あるけどさ」
個人的には馬油はあんまり好きじゃない。馬の油と聞いただけで吐き気がするし、シャンプーも思ったよりサラサラな髪質には……ならなかったからだ。
「馬油が浸透したら再度、化粧水と乳液をつけるんだ。それで、肌に入りやすくなる。云わば優秀な仲介役みたいなモン」
「へえ」
「保湿成分も入ってるし、安いし、使ってる人は多いんじゃねえの?」
「知らない。そんな話、同僚とも友達ともしないし」
「そんな生活してて、今の肌をキープできるのはせいぜい30までだから。よく覚えとけ、女の肌質と体系は30からウソの様に変わる」
「変わったら変わったで良いじゃない。何で、韓国の人は老化と無理に戦うワケ?」
「……なんだ?反韓か?」
「違うわよ。純粋に疑問なの。整形とか美白とか。それよりも、女としてもっと大切な事ってあるでしょ。」
「みんな、見せかけの美貌やレッテルに拘り過ぎ。大卒が絶対条件になってるのもソコ」
「国民性だよ。韓国人は完璧を求める。日本風に言うと『才色兼備』ってやつ」
「それでも性格ブスだったらダメじゃん」
「それを分からない女が多いから、韓国の芸能人が結婚遅いんじゃねえの?」
「はは、テヒョン。あんたワケ分かんない纏め方したわね」
「うるさい、黙れ。……はい、終わり」
手鏡を渡された。アナスイの物だ。独創的な色合いで、彼によく似合っている。
「うわあ。凄い…。」
「だろ?化粧水、乳液、美容液っていう基礎にほんの少しの手間を加えるだけで、こんだけ肌の色も質も変わるんだよ」
「明日の化粧ノリが楽しみだわ」
「礼は?まさか──頼んでないから、言わない。とは「言いません。……ありがとう。」
すっぴんは彼より不細工の私。
でもとびっきりの笑顔でお礼を言った。
彼は、少し間を置いてから何も言い返してくる事なくラーメンに手を付け始めた。
きっと、冷めてるし──伸びてるに違いない。
でも、文句を言ってくる事もなかった。

