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if…─もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
第1章 もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
"各列一番後ろの席の者はプリント回収して前へ…"
授業中、先生のそんな言葉にアタシは立ち上がる。
けれどアタシの席は一番後ろではない。それでもアタシは立ち上がる。
…それにはちょっとした理由があった。
「…雅くん、プリント」
「………」
そう振り返る視線の先からは呼び掛けても返事はなく、記名欄以外が白紙のままのプリントが開けた窓から入ってくるそよ風にヒラヒラと音をたてている。
教室の窓際の一番後ろの席…
そのプリントを押さえるように机に突っ伏して、授業中にも関わらず堂々と穏やかな寝息を立てている彼。
ボタンが全部開けられたブレザーのなかに着ているシンプルなジップパーカーのフードをすっぽりと頭に乗せ、
あ、髪の色変えたんだ…
その隙間から覗く絶妙なハイライトが入った前髪が、無造作につくられたスタイリングを風になびかせている。
胸元からは学校指定外のシャツの開いた襟がこんにちは。
しかも長い睫毛が影を落とすきめ細やかな肌はすべすべで、彼を形作るひとつひとつのパーツは一級品。それでいて長身に小顔とか、スタイルも抜群な彼ははっきり言ってカッコいい。
目を閉じていてもその整った面立ちは少しも崩れなくて、なのにいつもどこか不機嫌で、不愛想な一匹狼。
せっかく人の目を引き付ける強い引力を持つのに、当の本人はどこか人を寄せ付けたがらない独特のオーラを放つ。