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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第71章 精算

「これはお兄さんが得た金ではない。元々は君のお母さんが君が将来、何かあった時の為に積み立てていた金だ。
そこに私のほんの気持ちだが、金額を足しておいた。
だからこれは君が受けとるべきなんだ、わかるな?」
オフクロがオレの為に?
通帳には500万まで積み立てていた金額、そして沢渡が更に500万追加していて、合計で1000万という大金がこの通帳に記帳されていた。
「母が…僕に?」
「そうだ。だからこれは君の物だ。だから受け取らなきゃならないんだ、いいな?」
1000万…このオレに1000万の金を?
15才の少年にとって、とてつもない金額に亮輔は現実味を感じていなかった。
「…」
しばし言葉を失った。
「亮輔くん、もし何かあったら遠慮なく私に言ってくれ。私は君の味方だ、これからもずっとな」
沢渡は立ち上がり、亮輔に肩に手を置いた。
「それじゃ、また。亮輔くん、君は何があっても必ず生きるんだ。
それが二人のお母さんの為にも」
生みの母親と、育ての母親の為にシッカリと生きるんだ、と。
沢渡は部屋を出ていった。
亮輔はしばらく通帳を見ていた。
1000万…もしかしたら、母親じゃなく、沢渡がオレの家系と縁を切る為によこした手切れ金なのかも知れない。
もう誰も信じない、と誓った亮輔は、母親がオレの為にコツコツと積み立てていたなんて信じられない。
猜疑心の塊と化した亮輔は、こんな泡銭など、いるか!
ならば、とことん使ってやる、残高が0になるまで使って、あの忌まわしい会社や達也との事を絶ち切ろうとするため、この通帳にある金額を全部使いきって、関係を清算してやろうと。

