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第9章 呪縛からの解放―扉の向こう側へ―

頭の中が混乱して、思わず涙が溢れそうになる。不遜な耿輔の態度に、なけなしの気力を振り絞ってヤツのシャツをちぎれるほどに、きつく握りしめた。

耿輔は、どんな相手にもこんなふうに強引にするのだろうか…


俺のことはどう思っているのだろう？
単なる遊び…


そう考えたら昂ぶった気持ちが急速に萎えていく。

「止めろよ…遊びで堕とすなら、もっと他のヤツが幾らでもいるだろ！いつでもおまえの誘いに靡(なび)いてくるような、可愛くて素直で都合の良い人間が…女でも…男でも…なんで俺なんか…」


何云ってンだろう…？


ぇ…、どうして声が詰まるんだ…

俺、完全に酔ってる。

あ…、こんな顔見せたくないのに…

顔を背けようとした俺より一瞬早く、耿輔が俺の顎を片手で軽く掬(すく)い上げる。俺の瞳が捉えた耿輔の姿は滲んで見えた。