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囚われの城
第7章 ―――ミカンの見た世界
しばらくすると、見覚えのある男が部屋に来た。
紳士的なジャケットを羽織り、顎さ少し髭を生やした、とても印象のいい男性。
彼をテレビで見ない日はない。
俳優の白戸春馬、28歳。
私がとても好きな俳優さん。
「ようこそ、桐原財閥のメイドさん」
テレビドラマで聞いた声と同じ低音が、コンクリートの壁で跳ね返って私の心に響いた。
でも、動揺を顔や態度に出すことは厳禁。
私は……いや、ここにいるメイドもだろうけど、胸の高鳴りを押さえながら立ち上がり、息の揃ったお辞儀をした。
「すごいね。君たち、相当ご主人様にしごかれたみたいだね。頭を上げなよ」
白戸春馬はユイさんの頭をゆっくり撫で、優しい声色でそう言った。
白戸春馬は付き人に部屋から出るよう指示すると、内側からドアをロックした。
振り返った彼の顔はテレビで見るような美しい顔立ちなのに、その表情はどこか不気味だった。
「平沢みのり、加藤リイナ、吉田汐里、高居由美って……知ってる?」
「はい」
白戸春馬は、私の隣にいたメイドにゆっくり近付きながら言った。
平沢みのりは女優で、最近はひっきりなしにテレビに出ているきれいな人。
加藤リイナはモデルで、少しアホっぽいのが可愛い、渋谷が似合う今時な女の子。
吉田汐里は恋愛禁止のアイドルグループの上位で活躍する、活発な女の子。
高居由美は歌手で、数年前から人気が上がり続けているバンドのボーカル。
どの人もテレビに映らない日はないってくらい有名な人物だ。
「俺の元カノなんだ」