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囚われの城
第9章 変化する気持ち
黎明は上から瑠菜を見下ろす。
瑠菜はただ頷いた。
「俺の管理の下でやらせるつもりだったのに、お前ら一体どこに行ってた?」
「それは…」
そういえば、日向は言っていた。
カメラのついた個室がたくさんある、正面玄関前の部屋…。
そこで使用禁止になっていた、異国のような綺麗な部屋。
黎明が何か大切にしている部屋だ、と日向は言っていた。
瑠菜は正直にあの部屋を使ったことを言えなかった。
「この城のほとんどの場所にカメラがある。それでもお前らの居場所を掴めなかった」
「……」
「城を出たのか?日向の事務所に連れて行かれたか?」
黎明は、本当に瑠菜を心配しているようだった。
沈黙を続けることに罪悪感を抱いた瑠は、悩んだ結果口を開いた。
「使用禁止の、部屋で…日向さんと、ご一緒していました…」
怖くて黎明の顔を見ることができない。
黎明は、何も話さない。
気まずい沈黙が続いた。
「申し訳ありませんでした…」
瑠菜は震える声を絞り出す。
「何が?」
「…日向さんが…あの部屋はご主人様の思い出の場所だって…」
「はぁ…」
黎明はくしゃっと頭をかいて、力なくソファに座り込んだ。
「そこまで日向に教え込まれたのか」
「いえ、あの…」
「俺の年は、26だ」
「…え?」
「お前、帰るか。現実世界に」
瑠菜の目を見て、黎明はそう言った。