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囚われの城
第9章 変化する気持ち
黎明の声が頭の中でぐるぐる回る。
この城から解放されるの?
「お前がいると面倒だ。後のことは龍に任せておく。この城を出ろ」
それはまるで、瑠菜を突き放すような冷たい言葉だった。
この城は物凄く変わっている。
ここにいても次にどうなるのか、最後はどうなるのかまったくわからない。
そんな不安だらけの世界で、メイド一人一人の運命は黎明の手に握られている。
そんな世界から、出られる?
嬉しさはある。
でも、瑠菜は言いようのないムカムカした思いが胸に芽生えていた。
黎明に部屋に戻され、言われた通りに荷物をまとめる。
荷物といっても引き出し3段分。
簡単にまとまった。
お母さんはどうなったんだろう。
ここから出られたとしても、母親がいなければ城を追放されたも同然だ。
「瑠菜ちゃん、準備できた?」
「はい…」
「そのメイド服じゃ外に出られないから、最初に着ていた服に着替えて」
龍に服を渡される。
母親が最後に用意してくれた、純白のワンピースと桜色のカーディガン。
瑠菜はその服に袖を通し、小さなカバンを持った。
「もっと喜びなよ。瑠菜ちゃんは普通の中学一年生に戻って、普通に友達を作って、恋もできるんだよ」
「戻れるんでしょうか」
「俺が保護者として瑠菜ちゃんと一緒に暮らす。この城でのことは、ゆっくり忘れて行けばいいよ。主はきみを解放すると言ったから」
龍が瑠菜の頭を撫で、ツカツカと歩き始める。
いとも簡単に城を出た。
黎明の姿は無かった。