この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
囚われの城
第9章 変化する気持ち
瑠菜はその手紙を読んでいる最中、収まらない吐き気で保健室に駆け込んだ。
桐原財閥の裏の顔が、こんな中学生にもばれている。
自分が桐原財閥で性奴隷として暮らしていたことを、もしかしたら知られるかもしれない。
紫苑に喜んでもらいたい…。
その一心で尽くした昨夜のことで、紫苑は何か気付いてしまったのかもしれない。
そんな不安が押し寄せ、瑠菜は保健室で何度も嘔吐した。
廊下でこそこそと話す生徒。
自分がチラチラ見られている気がする。
その全てが自分のことを言われているようで、瑠菜は恐怖に震えた。
「杉浦さん、歩ける?」
保健の先生が瑠菜の背中をさする。
あたりは真っ赤な夕日に染まる時刻。
瑠菜は朝から保健室を離れることができなかった。
「ご家族に連絡したから、まだゆっくり寝てなさい」
「え…?家族って…なんで…」
「お迎えに来ていただくことになってるわよ。先生はこれから会議だから、送ってあげられないの」
瑠菜は疑心暗鬼に囚われた。
桐原財閥の情報が漏れている今、龍が迎えに来てしまったらバレるかもしれない。
自分もサラと同じ、桐原財閥と関係のある人物と見られてしまうかもしれない。
「随分ご迷惑をおかけしたようで、うちの瑠菜が。私が責任持って看病します。先生はお忙しいでしょう。後はお任せください」
「保護者の方ですか?では、お言葉に甘えて。ドアは閉めてお帰りくださいね」
にこやかな笑顔で現れた一人の男。
「…な、んで…」
「龍は今日、主の招集で留守なんですよ。今日一日、私があなたの代理保護者です」
保健の先生と悠長に会話するのは、日向だった。