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囚われの城
第9章 変化する気持ち
日向は瑠菜の肩を支えて保健室を出る。
黒いスーツに身を包んだ日向。
どうか、誰にも会いませんように…。
ーーーしかし、こういう時にこそ、一番会いたくない人に会ったりするものだ。
「瑠菜ちゃん…」
「瑠菜…」
「…紫苑、先輩…ユズ…」
サッカーのユニフォーム姿で片足を引きずり、ユズに付き添われている紫苑。
部活中に足をひねったのは一目瞭然だった。
紫苑は瑠菜の肩を支え、見方によっては肩を抱いている日向に目を向けた。
「おや、お友達かな?」
「あなたは…」
「瑠菜がお世話になっているようで。しかし今は急ぎます。では…」
紫苑は日向を見て何か言いたげだったが、日向はそれにかまわず歩き出す。
ユズの顔が、怖くて見られなかった。
ただ日向の腕の中で小さくなり、震える足を必死に前に出して歩く。
やっと学校を出て、日向の車に乗り込む。
「さっきの男子、私を知っているようでしたね。どこでお会いしたか、私はわかりませんが」
「サラさんのこと、日向さんは知ってるんですか?」
「えぇ、もちろん。あれは私が落としましたので」
日向は相変わらず冷たい笑顔で運転席に入る。
落とした?
落としたってどういうことだろう。
「かねてから龍があれを気に入っていたんですよ。なので、あれの両親に金を貸し付けました」