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優しいヒトに虐められてます。
第16章 彼の秘密
ハルは事務所のドアを開けた。
今や梅雨も明けた真夏だと言うのに
ドアを開ける手だけは冷たかった。

冷房を利かせた室内で、大津川が待っていた。
「どうぞ。好きなところに座って」

ハルはいつもの寝台に腰かけた。
大津川が少し離れた椅子に座る。

「たぶん、お互い話したいことがあるよね。
どっちから言う?」
「好きです!!」
それがハルの第一声だった。
開口一番にそう言うと、ここに来る前に決めていた。

「トウキくんと、もっと一緒にいたいです!!
だから……もうこれきりなんて……イヤだよ……」
最後には、結局俯いて涙が出てしまった。

「……一度は信頼してくれるって言ったのに。
やっぱりそういう風に捉えてたんだ」
「え……?」
ピタッと涙が止まった。
まだ何も言われていないのに、心が勝手に安心しようとする。

まだだ。
まだダメ……ちゃんとトウキくんの言葉を聞いてから……

「僕は確かに、『しばらくこういうのは控えよう』
って言ったけど
それは僕がハルに『エッチなことをするのは控えよう』
ってことだよ。しかも一時的に。
もう会わないだなんて言ってないよ。
まあ、ちょっと前まではそういうことも
確かに考えてたんだけど」
「どういう……こと……?」

っていうか、ちょっと前まではやっぱり
そういうことも考えてたの……?

「順を追って話すよ」
大津川は謎解きでもするようなセリフを皮切りに
全てを語り始めた。
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